はじめに

Rakutenの業績は2022年1月から9月で2500億以上の赤字が発生している。EC(楽天市場)やフィンテック事業は2桁台成長を続けている一方、モバイル事業の赤字が四半期で1000億円ほど発生しておりこれが業績の重しとなっている。Rakutenは2023年中の単月黒字化を目指すと公言しており、今回は素人が決算資料を見てその可能性について考えてみる。なお、単純に黒字の可能性のみを考え、資金繰りについては考えない。また、決算資料は4半期ごとであるので四半期分の収益で考える。

Rakuten モバイル事業の決算 rakuten

2022Q3

2022Q3の決算について現状を確認する。2022Q2では1243億万円の赤字であったが、逓減し、1209億円の赤字となっている。 モバイルセグメントの売り上げは、MNO、MVNOとして通信を提供するRakuten Mobile事業、世界のキャリアにRakuten Mobileで培ったソフトウェアやハードウェアを販売していくRakuten Synphony事業、電気やガスなどのRakuten engrgyの3つからなっている。決算の結果をしての表に示す。

mobile revenue

これによると2022Q2から2022Q3の売り上げ増加の要因はエネルギー事業であり、世界的な電気料金の価格高騰により売り上げが増加しているのではないかと考える。しかし、モバイルセグメントの黒字化を考えるうえで大切なのはモバイル事業とシンフォニー事業をいかに売り上げを伸ばしていくかであると感じる。

2023年中の黒字化

先ほどモバイルセグメントの黒字化を考えるうえで大切なのはモバイル事業とシンフォニー事業をいかに売り上げを伸ばしていくことであると推測した。ここではモバイル事業とシンフォニー事業のそれぞれについて詳しく考える。

シンフォニー

シンフォニー事業の売上高が今回初めて説明された。22Q4の売り上げは良くて2000億円ほどではないかと予想される。決算発表の中で利益率が示されていないがシンフォニー事業も投資段階であるため、赤字である可能性がある。仮に楽観的に10%の営業利益を出したとしても200億円にしかならず、1200億円の赤字を埋めるためには到底足りない。5年後に大きな収益を生んでいる可能性はあるが、2023年中の黒字化にはあまり貢献しないだろう。 symphony revenue

モバイル

よってモバイル事業の実力で黒字化する必要がありそうである。収支を改善する方法は3つに分けられる。

  1. ARPUを上げる
  2. 新規ユーザーを獲得する
  3. ネットワークのコストを削減する

それぞれについて考える

ARPUを上げる

現在のARPUが今回の決算で初めて公開された。エコシステムアップリフトをのぞけば、2000円ほどであると考えられる。現在、0円を廃止したことにより使い放題を標榜した新規加入者が増えていくことを考慮し、新規ユーザーのARPUが3000円としても2023Q4の全体のARPUは2300円を大幅に上回ることはないだろう。 ARPU

新規ユーザーを獲得する

これは大切なことである。現在455万人のMNOユーザーがいる。0円を行っていたときでさえ年間150万人ほどの新規ユーザーであったそのため、楽観的に2023Q4でも600万回線ほどでないかと考える。

この2つから2023Q4の収入を計算してみる。600万×2300円*3か月=414億円であり、22Q3と比べて210億円程度増収である。これでもまだまだ足りない。

ネットワークのコストを削減する

正直黒字化するためにはこれをどこまで行えるかにかかっているような気がする。 cost この図がどこまで正確なのかよくわかりませんが4G基地局数60000超、4G人口カバー率99%+を達成するのは2023年中とされており、4割ほどコストをが下がっているように感じられる。

pl これがPLのネットワーク費用に該当するのだとすれば2022Q3のネットワーク整備費用1030億円のうち、約400億円の削減が見込まれる。また、原価の項目も急速に低減しており100億円単位の改善が可能なのかもしれない。さらに販売管理費で100億円ほど減らせば、収支は改善する。

黒字化できるか

ここまで見てきたようにシンフォニー事業200億,ARPUの改善と新規ユーザーの獲得により210億,ネットワークコストの削減400億,原価の削減100億円、販売管理費の削減100億、で合計1010億円の改善を予想する。楽観的な見積もりを行ったつもりであるがこれでも黒字化には200億円ほど足りていない。ARPUにエコシステムアップリフトを600円ほど考慮しても、600円×600万回線×3か月=108億円であり、2023中の単月黒字化はかなり厳しいと感じる。 さらなるネットワーク整備費用の減少と新規ユーザーの獲得、ARPUが必要である。個人的にはモバイル事業に投資を続けていけばいつかは黒字にすることが可能であると考えるがその投資資金の捻出方法とどのように黒字にする計画なのかがあまり明確ではないことが、皆を不安にさせているように思う。2023年中の単月黒字化の目標は変わりないとするなら、根拠を示してほしいが、2023年Q4の決算を待って予想と見比べることを楽しみにしたいと思う。

Reference